2.子どもの脳の発達

赤ちゃんの脳

 赤ちゃんは生まれてすぐに、見たり聞いたり嗅いだり触られて反応したりすることもできますが、それはボンヤリとしたものです。心臓や肺のような生命にかかわる領域は配線が完了していますが、それ以外の領域では、ニューロン(脳細胞)の間の配線はわずかで弱いのです。

 でも生まれて数ヵ月経つと、新しい結合(シナプス)ができて、代謝の活動も高まってきます。繰り返し繰り返しの刺激は、このシナプスの結び目を強くしていきます。

 このようにして2歳までには、子どもの脳は、大人の脳の2倍ものシナプスを持ち、2倍のエネルギーを消費するようになります。

 人の体の中でも、手は、脳の発達のために大きな役割を担っています。1歳くらいになると、子ども達は手先が器用になり、手を使って物と関わるようになります。それが脳の成長を助けているのです。

 子どもが興味を示すことを見守り、それを続けさせてあげると、その経験が脳細胞のネットワークを発達させます。

 刺激が足りないと、子どもの脳の発達は遅れます。例えば、ほとんど手を触れてもらえない子どもは、同年の普通の子どもに比べて脳の発達が20〜30%も小さいことが分かりました。  

 
@初期の胎児の脳は、必要な数よりはるかに多い、約1000億個のニューロン(脳細胞)を作り出します。

 余分なニューロン(脳細胞)はやがて取り除かれます。

Aこの1000億個のニューロン(脳細胞)から、軸索(配線)が伸びて、別のニューロンに届き、信号を伝える仮のシナプス(結合)を作り出します。

 この仮のシナプス(結合)は、実際に使われるよりも数兆以上も多く作られます。

B電気的な刺激(信号)が伝わると、シナプスは強化されます。

 信号が伝わらなかったシナプスは退化していきます。

C誕生後、赤ちゃんの脳では、第2段階の発達が始まります。信号が届くと、軸索と樹状突起との結合部(シナプス)が増えていきます。

 感覚器官から入ってくる刺激による電気信号が、シナプスを残したり消したりしながら、脳の配線を仕上げていきます。

“TIME”(1997.2.24号)より抜粋
◆ まさに、「豊かな体験は、豊かな脳を作り上げる」のですね。

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臨界期(窓)とは?

 幼児期の脳の発達で、最初の数年の間に限界がくるものがあります。

 何歳から何歳までに入力しなければいけない…という限界、それが 「臨界期」または「窓」といわれるものです。
 

 赤ちゃんにたくさん話しかけることは、言葉の学習をめざましくスピードアップさせます。

 赤ちゃんの運動能力は、出生後4年間で発達します。赤ちゃんに、安全な範囲内で探検する自由をたくさん与えるのが良いようです。

 たとえば、生まれた直後からしばらく目隠ししておくと、永久に盲目になってしまいます。

 また、鳥のヒナは、親鳥の歌声を聞かないと、その鳥類固有の歌を覚えないのですが、赤ちゃんもそれに似たところがあるようです。

 他にもいろいろな「窓」があります。たとえば言葉の「窓」には幾つかのシリーズがあって、文章を組み立てる能力の窓は5歳か6歳で閉じてしまうようですが、新しい単語を覚える窓はいつまでも閉じないようです。

 また、外国語を学ぶ能力は誕生から6歳ぐらいまでが最も高く、その後はどんどん下がっていきます。

 赤ちゃんにたくさん話しかけることは、言葉の学習をめざましくスピードアップさせます。

 「親語」(赤ちゃんに高音で歌うように話しかける)は、とても有効だといわれています。

 赤ちゃんの運動能力の回路は、出生後4年間で次第に発達して行きます。赤ちゃんに、安全な範囲内で探検する自由をできるだけたくさん与えるのが良いようです。

 絵を描くこと、バイオリンやピアノを弾くことなどの活動は精密運動の技能の発達を促します。運動能力は大まかなものから始まり、次第に精細なものへと発達して行きます。

 “TIME”(1997.2.24号)より抜粋

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パターン・ラーニング

 大人が頭で考えて理解しようとするのにくらべて、赤ちゃんは、考えるのではなく、体で感じたものをそのまま吸収してしまう能力を持っています。繰り返し見聞きすることをそっくりそのまま丸ごと身に付けてしまう…そんな能力をパターン・ラーニングといいます。
 
 
  2歳になる孫が、看板を見て「あれはヒタチ、こっちはトーシバ」と得意げに教えてくれる。

 母親に「漢字を教えたのか」と聞くと、字を読んだのではなく、パターンとして覚えたのを識別したのが分かった。

  これは幼児の識別能力が、大人が考えているよりもはるかに高いことを示している。

 つまり、幼児は理屈抜きに、ある一つの事柄をパターンとして認識する、優れた能力を持っているのだ。

(井深大著『幼稚園では遅すぎる』より)
   幼児は、並外れた吸収力を発揮して、日常見聞きすることは何でも取り入れます。とくに繰り返して体験することは、脳細胞にしっかり刻み込まれていきます。

 ということは一番よく接触する両親や家族から学ぶことがとても多い…ということです。周りの大人がしっかりした大人の態度を示すと、それを理屈抜きでしっかりと身に付けていきます。

 両親が、いつも、よい生活習慣をやって見せて、
パターン・ラーニングさせてあげるといいですね。


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脳の健全な成長を阻むもの?

 胎児期ほど、成長が速くまた複雑な時期はありません。ですから、胎児期はまたとても傷つきやすい時期でもあるのです。こうした大事な時期に、胎児が、有害な薬物や、母親の有害な体験を受けて、知らないうちに深刻な影響を残してしまうことがあります。この影響の多くは、子どもが成熟してから現れます。

 1950年代までは、胎児の発達は遺伝子がつかさどるものと考えられていました。子宮という安全圏に守られた生命に、外界の影響が及ぶとは思えなかったのです。でも、サリドマイド児が急増するに及んで、事態は一変しました。

 それから30年あまり、科学者は、いろいろな薬物が胎児に危険をもたらす…と警告し続けてきました。でも、成長した後に現れる暴力などの異常行動が、実は、そうした胎児期に影響を受けた薬物と関係がある…と考えるようになったのは、ここ10年のことです。

@ テ ラ ト ゲ ン

 胎児に奇形を引き起こすもの(催奇形性物質)は英語では「テラトゲン」と呼ばれています。アルコールも、ニコチンも、コカインなども、いずれも「テラトゲン」です。

 たとえばニコチンは、低体重児未熟児が生まれる原因となりますが、そうした子どもは、学習が困難、他の人と親しむ感情が乏しい、注意散漫、などなど、神経系に傷を負いやすく、その結果、学業不振に陥り、自尊心を失い、疎外感を持つようになり、それで暴力的になりやすいのです。

 最大の問題は、胎児が、どの時期にテラトゲンの影響を受けたかということです。

 薬物アルコールによって傷つきやすいのは、「胚子期」つまり受胎後8週間目までと考えられています。不幸なことに、胚子期にはまだ妊娠に気がついていないことが多いのです。

 合法的な薬物(市販のカゼ薬など)も、胎児の成長に悪い影響があるかもしれないので、妊婦としては、疑わしい薬は飲まないことが賢明でしょう。

A 栄 養 不 良

 栄養不良も大きな問題です。とくに深刻なのは、脳の成長がもっとも速い、妊娠7ヵ月目から生後2年までの間です。

 脳はエネルギーをたくさん使うので、休んでいる状態でも身体全体の酸素の20%も必要とします。脳細胞のネットワークが発達するには、グルコースアミノ酸が欠かせません。

 鉄分は、脳の発達にとくに重要です。胎児期から生後満2歳までの間に鉄分が不足すると、脳に取り返しのつかない損傷が起こります。

 貧血(鉄分不足)は、就学前の子どもの注意散漫や記憶障害に関係してきます。

 また、たんぱく質が欠乏すると、神経伝達物質の生成に欠かせないアミノ酸などが不足することとなります。

 子どもへの悪い影響は、ただ一つの原因で起こるのではなく、子育てのいろいろな環境と絡みあって生じるのです。

  そして、保護者が早く気がついて、環境に気を配り、子どもにたっぷりと愛情を注げば、手遅れということはなく、十分回復ができます。  


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